XTC Best Band Ever

XTC is the best band ever. Period.

デイブ・グレゴリーの最新インタビュー「アンディにXTCコンベンションに一緒に参加しようと説得中」「XTCを救ってくれたのは間違いなく音楽の質の高さ。アンディ無しではXTCは存在し得なかった」

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1/2022

 

"ロスでチャリティーイベントに参加した時、参加ミュージシャンの大半がXTCの大ファンで、誰かがMayor Of Simpletonを演奏し始めると瞬く間に大人数の熱狂的な大演奏となった!彼らのXTCへの愛の深さにビックリ。それまでのXTCの苦労が報われた気持ちになった”

 

XTCとヴァージンとの契約書は”全費用はXTCが払う。全所有権は永遠にヴァージン”というものだった。それなのに、彼らはマスターテープを見つける事も出来ない。(注:XTCのPVでさえ費用はXTCが払った)

 

NonsuchとOranges & Lemonsはオリジナルよりスティーブン・ウィルソンのリミックスが優れている。

 

アンディとコリンがソングライターだから取り分が大きい。でも、もし自分がバンドのソングライターだったら、ギターソロ等の極めて楽曲への大きな寄与がある場合、自分の印税の半分を付与すると思うけどね。U2だと収入は全て平等に分けている。それで世界一裕福なバンドになった。REMも同じ。平等に分けている。トーキングヘッズは誰がどれだけ分け前をもらうのかで内輪揉めしてたよね。

 

自分は質素なんで、いつも身の丈にあった生活をしてきた。15年間は上に2つ、下に2つの部屋の家に住み、その後、25年間は今の家に住んでいる。きちんとお金を貯金してきたので、今はもっと大きな家に引っ越すこともできるけど、今の高騰している住宅事情ではそれはできない。

 

アップルヴィーナスはオーケストラ風アルバムで、ワスプスターはロックンロールアルバムとして、元々一緒に2枚組で出すアイデアだった。アップルヴィーナスのアルバムのレコーディングで、僕とアンディの仲が悪化した。1997年の話だけど。アンディがこのアルバムはオーケストラでやるって言った時、つまり僕がピアノ担当、ストリングスのスコア担当となるのかと思った。それはもの凄い時間が掛かることを意味していた。自分はやりたくなかった。仕方なく2,3ストリングスの楽譜を書いてみた。でもアンディはあまり満足しなかった。僕自身、良い出来ではないと知っていたが、やる気が出なかった。

 

アンディが頑固で、レコーディングを開始するに当たって他のメンバーと意見が合わず、困難な状況だった。その状況に関して僕らを責めたてた。それはフェアじゃないと思った。

 

チッピング・ノートンのスタジオだったんだけど、楽しく出来たアルバムではなかった。遂に僕はアンディと最後の大喧嘩をして、「もういい。好き勝手にやってくれ」と言ってスタジオを去った。二度と戻らなかった。完成したアップル・ヴィーナスのストリングスは素晴らしいよ。美しいアルバムだ。でも、アンディの“ソロ・アルバム”なんだよね。

 

ワスプ・スターは16ビットのデジタルレコーダーを使って録音したんじゃないかな。このアルバムは実は聴いたことがない。憎たらしいから意地でも聴く気にならない(笑)。でも数曲こっそり聞いて、良い曲があるのは知ってる。Maypoleを聞いて、この曲の録音に参加しなかったことをとても残念に思ったし、We’re All Lightのデモを聞いて凄い良いと思った。アンディは僕がこのプロジェクトから去ったことをいまだに許してくれていないと思う。

 

アンディともコリンとも何年も会っていない。アンディとは必要に応じてメールでメールの交換はしている。コリンとは喧嘩したんでまったく連絡を取っていない。

 

アンディがワスプスター以降、一枚もアルバムを出していないことにはガッカリしている。合計何時間にもなる曲を作ってるんだよ。でも、パラノイアになっていて…。つまり、アンディは何をやろうと、世間から、“ああ、良い作品だ。でも、XTCの作品を超えていない”と言われるのを恐れている。時間と努力を費やしてアルバムを作ったところで、XTCのアルバムほど良くないと批判されるだろうと恐れているわけ。

 

アンディは元々怠け者。作曲が大の得意だけど、そんなに努力しなくても自然に曲が湧いてくるんだ。寝ていても作れると思う。とにかく、アンディの意見に同調しやすく彼のやろうとしている方向性を理解してくれるミュージシャンを見つけて、これとこれをやってと指示出来ればアンディはレコーディング出来るんだよね。今は彼は持病の耳鳴りがあるから、ドラムキットを聴くのは辛いと思うけど。

 

なんとか、アンディに頻繁に行われているXTCコンベンションに一緒に参加して記念写真だけでもファンと撮ろうよと説得してるんだけど、ファンが大勢来てるしとか色々言い訳を付けてウンと言ってくれない。この際、リバース・サイコロジー(やるなと言われると逆にやってみたくなる心理を利用する)で、“コンベンションではアンディに会いたいファンなんていないよ”、とか、“おまえみたいな老いぼれが参加したら誰も来ないから、来るな”、なんて言ったら、参加か何かする気になるかも(笑)!まあ、期待はしてないけど(笑)。

 

XTCのメンバー全員、現在、スウィンドンに住んでいる。一緒に音楽をやるかどうか?ブラックシーとイングリッシュセトルメントのラインナップで最後のアルバムをやると聞いたら、瞬時に飛んで行くけどね。XTCの4人でやるなら良いけど、個々のメンバーのソロアルバムは参加したくない。

 

もし家出をする際にアルバム一枚とギター一本だけ持ち出すとしたら?アルバムはジミヘンのAxis: Bold as Loveだね。モノバージョンだけど。良く高いお金を出してハイファイに拘ったりする人がいるけど、自分は傷だらけのモノバージョンが好き。このアルバムはプログロックというかサイケというか。天才的。エディー・クラマーのプロデュースは素晴らしいし、ミッチ・ミッチェルのドラムも過小評価されてるけど凄い。ジミヘンに完璧のドラマーだった。ジミヘンとミッチが一緒にやるともの凄い。

 

ギターはスカイラーキングでトッドと仕事をしている時にサンフランシスコで購入した1953年ゴールド・レスポール。最初にこのギターを使ったのはDear God。ボロボロだったので弾ける状態までに修復するのにお金が掛かったけどね。あのギターを弾く度に木の部分に宿っている魔法の音色が聞こえる。ロックサウンドなんだけど、ブリッジエンドのピックアップは完璧なるロックンロールピックアップとか。ネックのピックアップはジャズにぴったり。クラッシックも弾ける。弾きやすくて、サイズも形状も完璧で。古いけど、良いパフォーマンスをしてくれる。

 

2015年にロスでのミュージックチャリティーイベント(自閉症のチャリティー)に呼ばれたんだ。様々なミュージシャンが集ってビートルズホワイトアルバムを再現するコンサートで、僕がジョージのギターを数曲で再現する担当に指名された。そこでロスでのリハーサルに参加して、同じく参加していた他のミュージシャン達に会った。その時は、“ここにいるミュージシャンの内、自分の事を知ってる人なんて何人いるかな?とにかく参加出来ただけでもラッキーだなあ。多分、僕を呼んだ理由はXTCはちょっとビートルズ風だし、僕のギタースタイルはジョージに似ているからなのかなあ”、なんて思っていたんだよね。

 

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ところが、そこにいたミュージシャンのほとんどがXTCの大ファンだったんだ。まったく思いもしなかった。彼らはXTCがまだレコードを作っていた頃、大学生だったんだ。僕は彼らより10〜15歳くらい年上に見えたから。彼らが僕を見る目は、まるで憧れ続けたビートルズのジクソーパズルのピースを見てるかのようだった。リハーサルは3日間におよんだので、時間的に余裕がタップリあった。すると誰かがXTCのMayor Of Simpletonを演奏し始めた。勿論、僕もそれに加わらなきゃいけなくて(笑)。瞬く間に大人数の熱狂的な大演奏となって!(笑)凄いありがたいと思ったね。

 

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あの瞬間から自分はみんなに知られている存在なんだと意識するようになった。それまで全く自覚がなかったからね。イギリスに帰国して、すぐにアンディに、”ロスのミュージシャンやレコーディングスタジオ関係者のXTCへの愛の深さときたら、全く想像も出来ないと思うよ!”、って言った。感謝の念と心が満たされる経験だった。同時にそれまでのXTCの苦労が報われた気持ちがした。というのも、僕らは常にハッピーなバンドだったわけじゃないからね。だって、XTCって、バンド・キャリアの悪い教訓となるバンドだからさ。(注:つまりXTCは全てにおいて成功するバンドの逆を行った。)

 

唯一XTCを救ってくれたのは間違いなく音楽の質の高さだった。独創的で、メインストリームではなく、決してプラチナ受賞するような音楽ではなかったけど、XTCは存在したんだよね。

 

インタビュアー:僕もXTCの場合、同じアルバムを色々異なるフォーマットのバージョンを買いそろえてる。”おや、また違うバージョンのスカイラーキングだな。既に持ってるけど、これは違うフォーマットだから買おう”って。XTCのレコードは僕にとって非常に大切な意味を持つから。今度はスティーブン・ウィルソンがノンサッチをリミックスしたから、これも買っておこうって。自分のポップ音楽の基盤となるのがXTCのレコードだから。他にこういうバンドはいない。デイブが少しでも、どれほどXTCのアルバムが僕らファンにとって大切な意味を持つものなのか分かってくれて良かった。作曲は優れているし、演奏も良いし。メンバー全員が優れている。20年ずっと最近出したサイケEP以外はXTCは作品を出していない。でも4人全員がいなければXTCのアルバムは作れない。

 

同意するね。僕らメンバーは結構良い組み合わせだった。音楽の事だけではない理由でこんな風にバラバラになっちゃったのは残念なことだ。でもXTCのメンバーで活動する機会をもらえて良かった。一体何人の人が僕らみたいにやりたかったことをやって、それで生計を立ててる?

 

 

テリーはオーストラリアからスウィンドンに戻ってきて以来、何度も一緒に飲みに行った。テリーとは仲違いしたことがない。

 

アンディがいなかったらXTCはありえなかった。一体いくつXTCのトリビュートバンドやコピーバンドがいることか。人々はXTCに影響を受けている。XTCはアンディ・パートリッジ無しでは存在しない。

 

コリンはテリーとのTC&Iプロジェクトはもうおしまいにしたみたい。ライブの評判は凄く良かったよ。テリーはEXTCでライブやっているよね。観客として見に行く予定はないね。会場でファンに見つかって僕のことをひそひそ話しされたくないから。コリンとは何年も会っていない。残念ながら。

【和訳】アルツハイマーの妻を介護するジョン・ライドン「泣かずにこういう話をするのは正直キツい。いずれ記憶が完全に消滅するであろうがその過程がノーラにとって幸せな旅であるように僕は努力するだけ。ノーラは僕のことを決して忘れないだろうし、僕もノーラのことを絶対に忘れたりしない」

Sun 11 Oct 2020 

 

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「外出すると、人ごみや信号の点滅などを見てすぐパニックになるんだよね。”この人に殺される”なんて恐ろしいことを言い出したら、通行人が助けようと介入してくるし」

 

ノーラの介護で手一杯のジョンは自分の健康上のケアはしてるのか?

 

「してない。視力もどんどん衰えていってます。でも、ノーラを一人にしておくわけにはいかないから、自分のケアはできないんだよね。特にウイルスが蔓延している現状では、医者から帰ってきて、彼女に感染さえるわけにはいかない。自分は運転しないんで、運転手付きで行くことになっちゃうし。色んな意味で問題だらけ。肉体的にも精神的にも大変。ほとんど眠れないこともあるけど、少なくともノーラはハッピーだから」

 

ジョンの本の講演ツアー(パンデミックのため2021年まで延期)にノーラを連れていけないことを心配している。

 

「ノーラが大きな精神的ダメージを受けるから連れて行けない。空港やストレス、明るい光、人ごみに対応できない」

 

ノーラは24時間体制の介護を必要とし、ジョンが記憶の穴を埋めてくれないとパニックになる。キッチンを焼いてしまったり、レコーディングスタジオから逃げ出したり。誰かに殺されそうになっていると思い込んでいる。ジョンは、適切な看護師を見つけるのは難しいと言う。

 

「ノーラが介護者を信頼出来なければだめなんです。ノーラが何より最優先。彼女が安心出来なければだめ」

 

私は彼が介護の状況を正直に語る姿に感心した。

 

「公にするのは勇気がいることだと思います。でも、自分の心に留めておけばどうにかなるわけでもない。人に話すべきですよ」

 

ジョンは「愚痴」を激しく嫌っている。彼がロンドンの労働者階級の厳しい生い立ちの遺産だ。母親は病気がちで、父親が働いている間、ジョンは弟たちの面倒を見ていた。

 

「両親から学んだことは、自分を憐れに思わないこと。自己憐憫は許されないことだったんです」

 

それでも、ノーラの苦しみは彼に深い影響を与える。

 

「こういうのを泣かずに話すのは凄くきつい。みんな僕のことを知らないんでしょうね。非常に感情的なんです。情熱的な男なんです」

 

ジョンはノーラのアルツハイマーの発症を特定できないが(ノーラは常に鍵などの物忘れが多かった)、ノーラの娘のアリー(ピストルズのパンク仲間であるスリッツのアリーアップ)の2010年の癌による死がきっかけだったと考えている。アリーは病気の前、当時10代だった息子たちと折り合いが悪く、ジョンはノーラと一緒に彼らの世話をし、読み書きを教えていた。ジョンは進歩的な考えを持つアリーとは喧嘩が多かったが、そこには愛があった。

 

「アリーとはとても楽しい思い出がある。アリーが亡くなる時、みんなで集まって歌を歌いながらアリーの最後を見守ることができたことに感謝しているよ。でも、アリーが死んでから、ノーラは自分の中に閉じこもるようになったんです。自分の娘が死ぬという、そんな悲しいことをノーラは耐えなければならなかった。娘が死ぬなんて、母親なら誰しも絶対にあってはならないこと。心が引き裂かれるような思いだよ」。

 

ジョンは誰かがノーラを下に見るような口調で接しているのを見ると激怒する。誰かが、“(子供をあやすような口調で)あらあら、大丈夫?” とノーラに言うのを見ると、“そういう言い方止めろ!”と激しく起こる。その反面、ジョン自身も自分に苛立つことがないわけではない。

 

「たまにカッとなって意地悪なバカなことを口走っちゃうと、すぐにごめん!と謝らないといけない。彼女の目でわかるから。混乱させてしまった様子が」

 

ジョンは、アルツハイマーの親を持つ体験と、彼とノーラのようなアルツハイマーの伴侶を持つ夫婦の体験は別だと思っている。私がジョンは人生のパートナーを失ってしまったんですねと言うと、優しく訂正してくれた。

 

「彼女を失ったわけではない。いやいや、そんなことはないです。ノーラは今トラウマを抱えている状態。記憶の断片が少しずつ、しかし確実に薄れつつあり、いずれはすべて消えてしまうだろう。でも、それはノーラにとって悲しいものではなく、幸せな旅であるように僕は努力しているんです。ノーラは僕のことを決して忘れないだろうし、僕もノーラのことを絶対に忘れたりしない。彼女の耳の穴からそれ以外の何が去ってしまおうともね」

 

アメリカ市民権を取ったジョンはバラク・オバマヒラリー・クリントンを過去に支持したが、経済に関してはトランプを支持している。トランプ(前)大統領が人種差別者だと非難されたときからトランプを支持するようになったようだ。

 

「僕も全く同じことで非難されたことがあるから。そう言われた人は気分を害するよ」

 

人種差別主義者と呼ばれて「ショック」だったという。アリーが産んだ孫は混血だし、ジョンはロック・アゲインスト・レイシズムを支持した。彼の最初の回顧録は『No Irish, No Blacks, No Dogs』というタイトルだった。ルーツ・レゲエを支持し、アフリカ・バンバータと仕事をし、ヴァージン・レコードにレゲエのアーティストと契約するよう働きかけた。

 

ジョージ・フロイドの死について尋ねると、彼は悲しげにため息をついた。

 

「僕が知っている限り、あの事件が悲惨でないと言う人はいない。でも、警察や白人の黒人に対する人種差別を意味するものではない。すべての命が大切(All Lives Matter)だから」

 

私は、ある特定のグループがその言葉を使うとき、それはBlack Lives Matterを貶めるためだと言うが、ジョンはそれは解釈の間違いだと言う。

 

「もちろん、僕は反人種差別主義者です」と言いながら、政治団体や運動に左右されるつもりはないと言い添えた。

 

ジョンは、自分自身を含め、あらゆるもの、あらゆる人物を常に疑ってみるべきだと考えている。

 

「もし自分が間違っていたら修正しようとするよ。何度もそうしてきたし、そうしなければならなかったこともある。だから、議論や会話が好きなんですよ。一つの意見に凝り固まってたら、いつまでもそこから抜け出せないでしょ」

 

ジョンは、ノーラとの生活を、ひたすら暗いものとして描きたくはない。

 

「僕の状況は大半の人よりはラッキーだと思うよ」

 

ジョンはアルツハイマーがノーラの真の性格を増幅させてくれたと考えている。

 

「ノーラの性格の良さが前面に出てきている 」

 

ジョンとノーラはいつも一緒に笑い、フレッド・アステアの曲で踊り、古いコメディーを見る。このインタビューが終わったら、静かなうちに二人でビーチに行くそうだ。

 

「週末の人ごみでは無理。人が多すぎる」

 

ジョンは、自分がノーラの面倒を見ない選択を考えたりしなかった。

 

「自分は軽々しく約束はしない人間だ。それに僕のノーラだろ。お互いに一生裏切らないと約束した瞬間に決まった。これは永遠の約束になるんだと」

 

ノーラもジョンに同じことをしただろうか?

 

ジョンは力強く言った。「もちろん!」

 

もしジョンがノーラをホームに入れたら?

 

「自分自身にすごく裏切られた気持ちになるだろう。どうしても介護に耐えきれない人、あるいはその体力や能力がない人がいることは理解してます。でも、今のところ、僕には介護ができているし、精一杯ベストを尽くしてやってるんです。それで、実はとても幸せなんです」

 

ジョンは弟たちの世話についても、同じように感じていた。

 

「それは僕の性分なんでしょうね。男性の看護師みたいなもの。人の手助けが好きなんです」

 

ジョンの人生は対処できないようなことは何もないようだ。

 

「最初はどんな問題も乗り越えられないかのように思えたけど。解決するために努力を重ねたんです。その過程を楽しんでいるんだ」

 

 

これは愛なのか、苦しい年月なのか、大きな試練か?

 

「自分の本の中で言っています。すべては試練。これらの問題を解決しなければならない。逃げたり隠れたり、責任逃れをしたりしてはだめだ。正面からぶつかって、やり遂げなければならない。すまないけど、どうぞ。これが君に手渡されたカードだ。上手くゲームをするんだよ。嫌ならゲームを止めろ。素早く! そして立ち去るんだ」

 

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youtu.be

2021/1

 

「僕が若い頃、髄膜炎になって、その重病から回復中だった頃、実は記憶を失っていたのですが、TVのコメディ番組のおかげでなんとか、自分らしくいられた」

 

「今、ノーラは残念ながらアルツハイマーだけど、アメリカには多くの素晴らしいテレビチャンネルがあって、

あらゆるコメディ番組を見ることができる。本当に助かります。アルツハイマーの最大の治療法のひとつは、笑いを絶やさないことだと思うから。“治療”と言ってしまったけど、間違った表現ですよね。治療は無くて、あくまで一時的に止めるみたいなものです」

 

アルツハイマーは最終的に悲劇で終わるとわかっている。でも、人生とはそういうものだろう?人生とは最終的には死であり、残された時間を極限まで楽しもうと二人で決意してるよ」

 

ノーラはお二人の人生の瞬間を驚くほど鮮明に覚えているようですね?

 

「ノーラは25年前の記憶に集中すると、はっきりとした声で話すんだよね。でも、3分前に起こったことは何の記憶もない。奇妙な病気で、スイスチーズのように穴がどんどん大きくなっていくんです。脳は最終的にはすべての接続が失われてしまう。しかし、僕にとっては、ノーラの人格はまだそこに存在している。文章を作ることができない。そこに今向かっている過程みたいだね。だから、あきらめることはないんだよ。

ノーラはいつも僕がジョニーだと分かってる。それが僕たちの絆だ。 もう45年近く一緒にいるから、僕らはお互いを知り尽くしているんです。一緒にいる一秒一秒に価値がある」

 

ジョンの本の講演ツアーでノーラを置いていくことになった時、

彼女の面倒を誰が見るかどうやって決めたんですか?

ノーラの介護を始めて、離れるのは今回が初めてですよね?

 

「そう……決めるのに1年近くかかりましたね。サンタモニカの素晴らしい介護サービスの会社を見つけたんですよ。5人ほどの介護士を雇いましたが、ノーラと非常にうまくやってる。僕はノーラのために最善を尽くして介護しているつもりなんだけど、良く考えたら、ノーラが同性との会話を楽しみという特権を実は否定していたんですよね。それに気が付いて、必死に彼女に謝りました。介護をされてる皆さん、ここ良く注意してね。介護を受けてる人は会話が必要なんだよ。特に女性は一日に2万語を話す機会がないと相当な不幸感に襲われる。マニキュアとか、僕なんかどうやったらちゃんと綺麗に女性が塗るように塗るのかわからないし。 女性同士のコミュニケーションはとても重要で不可欠なものなんだよね」

 

そのことを知ったのはいつですか?

ジョンはノーラに献身的に介護していたのに、

実はノーラに足りないものがあったというのに気が付いたのは。

 

「献身が過ぎたんだよ。友達の多くがおまえはそういう奴だからと言ってるけど。僕はついついノーラの役に立とうと色々やるけど、それが時には彼女にとってやり過ぎで息苦しくさえなるんだろうなと」

 

「やり過ぎてしまって反省したけど、そこに何らかの喜びを見出すことは出来るんだ。学習曲線だ。最終的に、こういう反省をしながら、他人の面倒を上手に見ることができるようになると思うから。僕は多くの人がしがちな表面的な見かけより、その人の内面を見出すことを楽しんでいるから。人の面倒を見ることを面倒くさいとは思わないんです」

 

「僕だってキレるよ。一番僕が切れやすい瞬間は、ノーラを立たせる時。立たせようとすると、”イヤっ!”って言われちゃう。絞め殺したくなるよ(笑) 勿論、心の中で(笑)!苛立たしくなるわけ、だって、夜の11時、12時だよ。立たせようと、手を差し伸べるとノーラは “イヤだ!”って言って、目をそらすんです。次に手を上げて僕を掴む。目をそらしながら、手を上げて僕を掴んだよ…ノーラは自分で行動を決めるんです。彼女が自分で決めるのを待たないといけない。さっと起きろと言うより、彼女の決断を待つ、それが一番有益な方法です。食べ物でも同じ。ノーラは時には僕がスプーンで食べさせるのを好むんだけど、ときには自分で自分のペースで食べたいんだよね。ノーラを収容所に入っているみたいな扱いをしたくないから。実に報われた気持ちになりますよ。少しの忍耐が、物事をより良くする。そして、楽しくて笑いが絶えないんだよ。僕もノーラもいつもお互いに立ったりする時に倒れあっているんです。当然、トイレの話もあるよね。ノーラも自分の身体機能、トイレの正しい操作、手順、清潔にしておくことなどを忘れてしまうことがあって。だから、日本のウォシュレットを買ったわけ」

 

僕もちょうど東京にいて、最近、帰国したところです。あの日本のトイレは21世紀って感じですよね。

 

「素晴らしいよね。ずっと数時間座ってるよ(笑)!あなただって、そうでしょ、そうじゃないって言わせないよ(笑)」

 

あのスプレーはかなり強烈な勢いですよね?

 

「そう!噴射口が高すぎると謝って天井に穴が開く(笑)

暖房便座という発想だけど、ノーラにとっても、とても贅沢な時間なんです。彼女は毎回、またあの冷たいトイレに座るのかと思って、腰を下ろすと、あら、暖かいわって思ってるみたい。自分で取り付けようとしたら、失敗して1万2000ドル相当の損害を被った(笑)前作のアルバムでは、そのことを歌にした「ダブル・トラブル」って言う曲が入ってますよ」

 

「この1ヶ月はノーラと離れて生活していたので、胸が張り裂けそうだったけど、僕が家に帰ると、彼女はとても喜んでくれてね。縫って貰ったネイルを見せてくれたり。自分の家で僕以外の人と社交的な生活を送れるようになったことを喜んでいました。僕に連れまわされもせず、”離乳食”をスプーンで食べさせられることもなく、ノーラは自分で決断して、自分で行動している。彼女の頭は時々ふと非常に鋭く正確だったりする。悪いことから、良いことが起こったりするんだよね」

 

「コロナ・ロックダウンのせいもあって、あまり、ノーラには社会との接触が無かったんです。でも、もう少し賢く、毎週6人くらいこっそり家に呼んでノーラと社交させるべきだったと思う。時には、自分の愛する人のためであれば、ルールや規則を破る価値がある。ノーラが僕の人生で最も大切なものだから」

 

40年半を共に人生を過ごせたのは本当に恵まれた人生ですよね。

 

「45年間も(結婚という名の)刑務所に入れられるなんて、どうやらよっぽど悪いことをしたんでしょうね?(笑)」

 

ジョンの本のタイトルは『俺は間違ってるかも知れないし、正しいかも知れない』ですが、ジョンが最も最近、“自分が間違ってた”と過ちを認めて謝ったのはいつですか?

 

「あぁ......ちょうど2分くらい前かな(笑)。僕のノーラへの過保護なケアについて。過ちを認める、そうですね......毎日やってますね。自分自身を訂正することは良くやってる。やはり、家庭内で自分を改善していくことがとても大切だと思っています。非常に大事。だから、会話が好きだし、議論が好きだし、こういう”ブックツアー”をやってるのもすごく興味深いから。会場でファンの質問に直に答えて、その場の雰囲気を感じ取る。観客の質問に答えるというのは、最もオープンで、最も正直な方法ですよ。スタンドアップコメディみたい。より多くの知恵を得ることができると思いますね。ファン側からの視点で考えることが出来るのは楽しいです。知識人とかと話をするより」

 

アイリッシュは、結婚式で泣いて、葬式で笑う。それは衝撃的だと思うかもしれないけど、その方が本当はいいんです。もし誰かが亡くなって、真にその人に感謝し、その人を愛していたのであれば、その人の良かった所を褒めて祝ってあげて欲しいな。死者の悪口を言うのは好きではないから。昔、マーガレット・サッチャーが亡くなったときなんか、ほとほと嫌気がさしたからね。左翼社会主義者の奴らの多くがこっぴどくサッチャーの悪口を言っていたからね。彼女は亡くなったのだからさ。批判は彼女が生きている間にするべきだ。単純に卑怯なやり方だよ。死者は自分を弁護することができないんだからさ。僕がサッチャーを好きか嫌いかは関係ない」

 

確かにジョンがサッチャーのファンには思えないですね。

 

「要は死者へのリスペクトだろ。サッチャーは亡くなったんだからさ。オバマに票を入れたが、ガッカリしたね。たいしたこともせず、極めて平凡で退屈でした。そこにトランプが登場して、嫌われ者になったんです。でも、トランプは自分がそういう人間だと言うことを隠さない。僕は、そういう奴が大好き。ありのままの姿の奴。慇懃無礼な誰よりも。僕たちが普段慣れ親しんでいる二枚舌の嘘つき政治家ではなくて。トランプに対する世間の嘘のその量に本当に頭に来ましたよ。左翼過激派メディアCNNがいつも言っているのは、フォックステレビは右翼のプロパガンダだと。CNNが左翼の極端なプロパガンダであることはご存知でしょう。さらに腹が立ったのは、トランプへの毎日の個人攻撃。バイデン大統領になったけど、僕がバイデンにつけたあだ名は“老いぼれ怠慢者”。

特にアフガニスタンからの撤退の失態は彼の無能の直接の結果であると見ている。トランプだったら、最初に人々を撤退させただろうに」

 

「ノーラは時々、娘がそこにいるんだと想像することがあってね。それはそれでいいんだよね。最初の頃は、いぶかしげに、「いや、娘は死んだんだよ」なんて道徳的優越感まじりに言っていたんです。それがいかに残酷なことか。 本当に後悔している。そういう瞬間は心を配ってあげないと。ノーラは自分の人生の中で娘が生きていた瞬間を思い出しているんです。アリーが亡くなった夜、みんなで病院に行ったんです。癌で亡くなりました。自分の娘が癌で死ぬのを見なければならないのは、母親にとって最も悲しいことです。僕はなんとかそれを歌にすることができた。アリーは昔、スリットでソングライターをしていて、とても複雑な曲も歌っていたんだ。だから、お互いの仕事の情報を少しずつ話し合ったんです。良く僕ら口げんかしたからね。でも、それが家族ってものでしょ。そのまま、アリーは眠り込み、二度と目を覚まさなかったんです。それが、ノーラの問題の始まりだったのかもしれないと思っている。母親が子供の死とどう向き合って生きていくのか…男である自分には本当に理解など不可能ですよ。母親と子供の絆は男親のものとは全く違うものだと思うんです。もし、ノーラはアリーがまだ生きている存在だとして目に映っているのなら、それは素晴らしい贈り物だよね。そういう時は、アルバムを出して、一緒にアリーの全部の写真を見るんです。ノーラにとって、写真はとても大切なもの」

 

ノーラはジョンの愛をどうやって分かるのでしょうか?

 

「45年間、厳しくたたき込んだからね(笑)もうひとつは、ノーラに「愛してる」と言ってるから」

 

結婚生活45年って……すごいですよ……

 

「45年経ったとは思えない(笑)。僕たちはお互いに心に恨みを持たないんです。問題があれば即座に解決してきました。頭にきたその瞬間に相手に言って対処することです。周囲に人がいたり、誰かが聞いていようと、その場で即座に対処することが、より健康的な結婚生活につながるんだ。恨みを抱くことは、精神にとって毒だからね。自分の内に秘めるのは癌のようなものだから、それはやめよう」

 

 

 

アンディがキンクス『オータム・アルマナック』を語る「くそっ、この曲を書いてみたかった。大きすぎる存在の亡霊:自分のソングライティングキャリアはまさにこの亡霊を追い払おうとしてきた」

Andy Partridge of XTC on 'Autumn Almanac' BY Kinks

 

19975

youtu.be

 

It's a miniature movie, basically, that unravels itself as you are listening to it, and it has all these little movements or scenes. And they all seem to take place in the kind of mythical cozy London that the Ealing studios always had in their films, like The Lavender Hill Mob. The song just keeps turning and changing; you see a new facet every few seconds. But there's nothing unsettling about the fact that there are so many parts. Normally that would just be the death of a song, it would just scramble peoples brains. 

この曲は基本的にミニチュア映画だ。聴いているうちにだんだんストーリーが展開する。些細な動きやシーンがある。『ラベンダーヒル・モブ』のようなイーリング・スタジオの映画に必ず登場する神話的でこじんまりしたロンドンが舞台になっている感じ。曲はどんどん変化を遂げ、数秒ごとに新たな一面が現れる。パーツが多過ぎるが無秩序さは感じられない。普通、パーツが多いと曲の命取りになる。聴く者の脳を混乱させるはずなのだが。

 

The lyrics are very everyday. There's no "calling occupants of interplanetary craft" in it. All the language in it is what you'd say over a cup of tea. It's like a roller-coaster, but it's not a high-speed chromium-plated space-age roller-coaster - it's this slow creaking wooden baroque kind of roller-coaster. There are some lovely moments in it, like that sections that starts "Friday evening....." It starts off in this mournful minor thing, and you think, "Oh dear, Friday evening, the end of something," and then suddenly: "People get together" - it clicks into major, and becomes very optimistic. It just lifts your heart up another rung. And there's something very plain and uplifting about [from the chorus] "yes, yes, yes," this repetition of the affirmative.

歌詞は極めて日常的。♪惑星間航行船の乗員を呼び出す♪なんて出てこない。お茶を飲みながら話すような言葉が多い歌詞だが、実はジェットコースターみたいだ。それも宇宙時代のクロームメッキ高速ジェットコースターではなく、木製バロック調の緩やかなきしむジェットコースター。特に♪金曜日の夜...... ♪で始まる部分はジェットコースターの素敵な瞬間だ。哀愁を帯びたマイナーで始まり、「やれやれ、金曜日の夕方、何かが終わったのかな」などと思ってると、すぐその後♪人々は集う♪で突然メジャーに変化する。とても楽観的になり、心が一段高められる。そして、♪イエス、イエス、イエス♪という肯定的な言葉の繰り返しに、何かとても素朴で高揚した気持ちになる。

 

The woodiness of "Autumn Almanac" is really appealing. Everything sounds like sticks and branches and planks. The whole song is wallpapered in dead leaves, as far as I'm concerned. The [the Kinks] touched on this same sort of thing later on, in "Shangri-La" and "Lavender Hill," but it was more mannered, a bit more ponderous.

Autumn Almanac に感じる木質感が実に魅力的。すべてが木の棒や枝や板のように聞こえる。曲全体が枯葉の壁紙で覆われているようだ。キンクスはこの曲の後、Shangri-LaとLavender Hillで同じようなことを試みるが、ちょっとまとまり過ぎてるし、ちょっと重苦し過ぎる感じ。

 

Damn, I wish I'd written this song. I'll probably spend my life trying to. It's such a huge ghost; my entire songwriting career has been trying to exorcise it.

くそっ、この曲を書いてみたかった。たぶん、一生かけても書こうとするだろう。大きすぎる存在の亡霊:自分のソングライティングキャリアはまさにこの亡霊を追い払おうとしてきたのだ。