テリーチャンバーズの2002年レアインタビューPART2:XTC時代を遠い目で語る「XTCはDevoほどリズムを真剣に研究したりしなかった」「自分のドラミングは単なるアンディの引き立て役だった!」「ビルブルーフォードがDrums And Wires好きだったって?あり得ない!あの人は生き神だよ!彼がギリシャ人だったら絶対に神だったはず!」
テリーチャンバーズの2002年
レアインタビューPART2
XTC時代をビール片手に遠い目で語る
ビルブルーフォードがDrums And Wires好きだったって?あり得ない!あの人は生き神だよ!
自分のドラミングは単なるアンディの引き立て役だった
Chalkhills July 5, 2002 by Todd Bernhardt
テリーチャンバーズの2002年レアインタビューPART2
今回はかなりドラミングのテクについて掘り下げています。ドラムの事良くわからないので、誤訳があったらすみません。
TC(テリーチャンバーズ):Andyは、ちょうど、チェットアトキンズみたいのをここに入れてみて(笑)どうなるかみてみようみたいな! うしろから演奏したり、逆に演奏したり、他にも何か変えて出来る事はないか?って。 つまり、こういう事。
Andyがアイデアを思いつき、僕らに “おい、ここでちょっと~が要るような気がするな…” とか提案するんです。 例えば、Millionsみたいな曲。あれには、中国の影響を入れなくてはならなかった。 それがこの曲のテーマなわけ。
だから、小さいシンバルを打ち始めるんですが、もう少し繊細な打ち方になっていくんです。 そうやって歌が組立てられ始められ、そして、何について歌っているのかを考えるわけです。
Andyは、自分が思っているよりもっと深く考えているんです。 あのころに、アンディは以前よりもっと優れた曲を書き始めたんだと思う。 スピードのある歌か、スローな歌か、というのではなく、もう少し内容のある歌 -- 主題のある歌が出て来たんですね。
後の方では、イングリッシュセトルメントに収められた曲、例えばセンシズワーキングオーバータイムみたいな楽曲が出て来たんですよね。初期の作品より、1曲1曲を巧みに練り上げるように作り始めたわけです。
Devoは本当にリズムを研究したと思うが、XTCはそれほどリズムを深く掘り下げて曲を作ったりしなかったと思う
TB(インタビュアー): サイエンスフリクションや、シーズソースクウェア、ハングオントゥーザナイト等でこういう(ドラムのビートをマネする)をやったんですよね?どういう事を考えていたんでしょうか?
TC: それは難しい質問だなあ。本当に。というのも、ああいう曲のドラムは自然に出てきた感じなんですよ。Andyだろうが、Colinだろうが、曲を作る方が “えーと、ドラマーは、この曲ではドンバン、ドンバンではなくて、バンドン、バンドンと打って欲しい”と僕に頼むんです。わかります?
次に、頼まれるのは多分、コーラスとか、ブリッジ、ソロの部分で “この部分の反対をドラムにしてほしい。” そうやって、曲を完全にバラバラにするんですよ。XTCの大抵の曲は、多分普通はやらないような変わったドラムを土台に非常にシンプルなリズムが乗っかっていたりするんです。
メーキングプランズフォーナイジェルだって、例えば、凄くシンプルなリズムなんだけど、逆さになっているだけで。 あのリズムを実際にハイハット、スネア、バスドラムでプレイしたとすると、こんな風になって(ビートを口真似する)、ハイハットを8分音符で打つことになるんです。
ところが、僕はフロアータムでそれをやっているんです。 クソ簡単なリズムですよ。本当に。 一定の所でバスドラムを2ビートで強調されているだけ。シンプルな事を通常とは違った見方で考えてるだけです。ストレートに演奏するのではなくて。
Devoがやったみたいに、XTCがこの曲でリズムを深く掘り下げて考え抜いて作ったと思われるのは嫌ですね。Devoは本当に研究したと思うんですが。 僕らはそれほど深く考え抜いたわけでは無かったと思う。
TB: ここ数日、XTCのアルバムを再生して、テリーのドラムのパターンを聴いていたのですが、もう一つ気が付いたのは、テリーの演奏はいつもタム重視だったように思えるんです。普通はシンバルか、ハイハットで行くところを、あえてタムタムを打つことは厭わないって感じで。 どうしてそうなったんでしょう?
TC: 良い指摘ですね。 あれは故意にやっていましたね。バンドとして決めていたのは、ドラムは、通常のハイハット、スネア、バスドラムの型にはまらないものにしようということだったと思います。
僕らは、いつも “ちょっと待って。ここは、コーラス部だから、ライドシンバルを打とう”って感じですよ。 ネオンシャッフルとアトムエイジではやっているのが明らかでしょ。ライドシンバル/ハイハットのやつを多用しているんですよ。
でも、そういう通常から外れたやり方が出来たのは、そもそも楽曲が相当優れたものだったからですね。 自分達の曲でどこがコーラス部なのか、すぐに分かっちゃう。
“テリーがライドシンバルを叩いてるぞ。どうやら、ここがコーラスだな。” でも、聴いてる人達には分かりにくくしたかった(笑)! “おや、テリーは今、コーラス部にいるのか、ヴァース部にいるのか? わかんねーな。あいつ一体どこにいるんだ?” もしかしたら、他のメンバーさえも、なかなか分からなかったかもしれない! (笑)XTCのカバーをやろうとする人にも!
TB: ザ・リズムという曲みたいなのだと、こんな風に(8分音符ビートを口真似る)バスドラを打っているんですよね。 ダブルキックをやろうと考えたりしませんでしたか?
TC: いや、ないね。 もし、僕が脱退する前にもう一枚アルバムをやっていたら可能性としてはあったとは思いますけど。Andyはダブルキックはあまり好きではなかったわけで。
基本的に、アンディは4分音符と8分音符が好きな奴だった。 サウンドの下の方(ドラム)はすごくシンプルにしたかった。そうすれば、その上の方でもう少しいろいろ実験出来たからですよ。 ダブルキックみたいな事始めれば -- 3人組のバンドが必要だから。 XTCは、2本のギターの上、キーボードまであったし、ヴォーカルは3パートでしたから。そういうアレンジの中にダブルキックみたいの入れたらごたごたし過ぎだと思うんですよね。
言ってることが矛盾してるかもね。だって、ディープパープルはすっげえ見事なダブルキックやってるし、シンリジーだってそうだし、他のバンドもやっていますね。 でも、やらなかった言い訳としてはただ僕らの曲はそういうバンドとは異なっていたということでしょう。
アンディはサウンドの中に”隙間”を探して、それを埋める作業が好きだって?まさにその通り!
TB: まったくその通り。 そこで出てくる質問が2つあります。
質問1は、XTCでやったら上手く行っただろうか? たぶん、答えはNOでしょう。
質問2は、でも、テリーはやってみたかったのでは? 答えは、たぶんやってみたかったでしょう。
TC: その通りだと思う。 アンディはそういうのをやることに眉をひそめたんですよ。ドラムキットが肥大化するのを良く思わなかったんです。わかります(笑)?
こと、ドラムに関しては、あいつは小さいパーツをあれこれ寄せ集めたドラムセットで十分だと言う人だったんですよ。
小さいシンバルとかロートトムみたいのな地味なセット。嫌がったのは、ベースドラムがどんどんでっかくなっていくことです。超巨大ドラムセットとドラムライザーみたいな。 アンディはそれを食い止めたかったんでしょう。 (笑)“持っているもので間に合わせろよ。まったく!”ってさ。
TB: (笑)そうそう。 アンディがそういう事に関する自分のアプローチについて話してくれたんですが、良く言っていた事の1つで----確かにXTCの音楽を聴いてみると明らかなんですが----サウンドの中に穴を見つけて、その穴を埋める作業が好きだと言うんですね。つまり、テリーのドラミングで埋めなかったスペースを…
TC: そう。
TB: …その“穴”をアンディのギターや、ヴォーカルで埋める作業が好きだと言うんですね。 多くの場合、アンディはテリーの四拍子のドラミングに対して三部合唱を歌ったり、同じことをギターでやったり、とか。
そういう事をするには、ダブルキックだったら非常に難しい事になっていたでしょう。
TC: そうなんですよ。全く、おっしゃる通り。自分のドラミングは単なるアンディの引き立て役だったんですよ! (笑)いや、本当ですよ。まったくその通りだったんです。 さっき、たぶん影響を受けたドラマーとしてサイモン・カークの名前を挙げなかったですが、知っていますよね、フリーとバッドカンパニーのドラマーですよ。
TB: もちろん。
TC: 音の隙間と言う意味では、彼に受けた影響は大きいです。 たぶん、僕のドラミングでは聴けないんじゃないかな。でも、意識下には確かに存在しているんですよ。わかります? 隙間とか、穴とかを言い出すと、ま ず頭に浮かぶのが彼ですね。
TB: それは確実にテリーのドラミングから聴けますが。
TC: 本当に?
TB: ええ、それがわかるんですよ、というのも、ちょうど良い事に、僕は、テリーのドラミングと、他のXTCのアルバムのドラマーのドラミングに合わせてドラムをマネして叩いた回数はどのドラマーより多いはずなので(翻訳注:このインタビュアーはアマチュアドラマー)。
そのドラミングについて本人とここでこうやって話をしているのは、ちょっと変な気分ですけどね。 TC: (笑)そうですね。
TB: その隙間というものは自分のドラミングにもあると思うんです。テリーには多大な影響を受けましたので。
TC: あのね、トッド、中間業者なんかスキップして、さっき僕が名前を挙げたドラマーを直接聞いた方が良いですよ! (笑)
TB: ええー、実はそれもやったんです!
TC: すると、僕のドラミングと彼のドラミングとのつながりを感じます? 自分でも彼のやり方を目指して結構努力したんですよ。
結局、自分が到達したドラミングはさっき挙げたドラマー達の影響の全てを混合した結果なんですよ。 どこに到達したかは神のみぞ知る----いや、僕が到達したのはどこかって言うと、実は地球の底だったんです(笑)! (注:テリーはXTC脱退後、地球の底あたりに位置するオーストラリアに移住した。)
文字通り。 ドラムを叩き続けて遂に植民地時代の奥地の果てへとたどり着いてしまった。 植民地時代に、囚人をここへ島流ししていたんですよ----僕は自分で自分を島流しにしちゃった!
TB: (笑)ドラマーは誰しも影響を受けたあらゆるものを混ぜ合わせたスープなんじゃないかと思います----肝心なのは、影響を受けたすべてを入れて良く混ぜる。すると、元々影響を受けたものよりやや異なる味になる。
それでも、元の原料(影響)を味わうことはできる。 だって、テリーのドラミングを聴きながらマネして叩いたのは自分にとって良い事でしたし。そういうサウンドの隙間や、規律というものを聴くことが出来ました。プログレドラマーを聴いて育ったもので----ビル・ブルフォード、カール・パーマー、初期のフィル・コリンズ…
ビル・ブルフォードがDrums And Wiresが好きだって?(唖然)信じられない! 僕なんか彼の話をするにも値しない男だよ!
TC: そうですよね。 結局、僕は、そういうドラマーを聴くのを止めましたけどね。 “うーん、こんなすげえドラミングなんて俺には絶対にムリだ。だったら、これからは、俺は俺のやり方で行こう”って思ったんです。 (笑)
“学べる限りの事はこいつらから学び尽くしたからもう良いだろ”って(笑)。 あの人たちに追いつくことなんかあり得ないですよ。
だって、“やっと、こいつらのレベルに近づいてきたぞ”と思っていると、あの人達の新しいアルバムが出て、またひとつ上のレベルに到達しているわけ” だから、一生勝つことが出来ない! (笑)
TB: (笑)そうなんですよね、言いたいこと全く良くわかります。 これを知ったら何かの慰めにとなると思い教えてさしあげますが、ブルフォードの1980年のインタビューを読んだのを覚えているんです。あれはちょうどキングクリムゾンが再結成してDisciplineをリリースしたばかりの頃。そのインタビューでブルーフォードに今聴いているアルバムを5枚挙げてくれと聞いていたんです。 ブルフォードが挙げたアルバムの一つがDrums And Wiresだったんです。
TC: (唖然)本当に?
TB: 本当です。
TC: うわあ、それはジャグハンドル(卑猥なスラングで、意味は“あり得ないような事”)だ!そんな言葉使っても良いなら! つまり、信じられないよ!
TB: (笑)本当ですよ。ちょっと立場が逆になりましたよね? TC: うーん、だって… 僕なんか彼の話をするにも値しない男ですよ! (笑)あの人は生き神ですよ! 彼がギリシャ人であったら、絶対に神だったはず!
Part 3をお楽しみに~