アンディがTravel In Nihilonについて語る1「パンクムーブメントの渦中で愚かにも音楽の民主化だ!新時代の始まりだ!と思った。すぐにまやかしだったと気付いたその深い失望を歌ったのがこの曲」「ピストルズはふざけて楽しんでたからいいが。クラッシュは...」
アンディ・パートリッジがTravel In Nihilonについて語るPART1
「パンクムーブメントの渦中でこれこそが現代の音楽のターニングポイントだ!誰でも音楽が作れる時が来たのだ。民主化だ!新時代の始まりだ!と思った。でもそれもすぐにまやかしだったと気付いた。己の楽観主義に翻弄されたのはそれが最後だった。その深い失望を歌ったのがこの曲」
Sunday, June 29, 2008
Andy discusses 'Travels in Nihilon
AP:タイトルは70年代半ばに買ったアラン·シリトーによる本のタイトルから頂戴しました。すごく良い本ですが、曲はその本には関係ないです。ペテンについての歌ですよ。巨悪なポップカルチャーのペテン、宗教のペテンです。
この本から二つお借りしたものがある。実際のTravels In Nihilonというタイトルと、President Nilをオレンジズアンドレモンズのアルバムに使いました。(Here Come President Kills Again)
TB:そういう気持ちになったのは何故?何か恨みを、あるいは裏切りを感じていたのでしょう?
AP:ちょうどあのパンク/ニューウェーブムーブメントにすっかり飲み込まれてしまう年齢にあったんですね。愚かにも「おい、もしかしたらこれが現代の音楽のターニングポイントとなるのかもしれないぞ。もしかしたら、これこそが真の意味で誰でも平等に音楽に関わることが出来るムーブメントなのかもしれない」って思ってしまったんです。
民主化だ!というか革命的な新時代の始まりだ!みたいな。やりたい者はどんな奴でも音楽を作れる。そこには先入観など無いし、偉大なミュージシャンである必要もない。ファッションなんかもギョッとするようなのになって。だってどんなかっこしても良いんだからと思ったんですね。
それが己の楽観主義に実に翻弄されてしまう最後だったと思います。
ムーブメントの楽観主義の話ではないんです。人生で自分の楽観主義がこれらの新しい可能性に映し出される時期だったんです。 バンドがやっと軌道に乗り始めて、僕個人にとって世界は良い方向へと向かっていた。こいつらこそが俺の仲間なのかもなって感じさせてくれるムーブメントを体験していたわけですよ。
ところが、あっと言う間に、このムーブメントが以前と全く同じ目的に利用され始めたんですよ!昔と変わらないお決まりの"おまえらにあほな洋服を売ってやるよ"ってやつ。パンクというのは自分で服を作るってことだったろ。ところが、それがすぐにちゃんと流行の服を身に着けないといけないことになってしまっていた。しかも、高価な服。
あの頃は偽物臭い政治色濃いバンドがうじゃうじゃいたんですね。だからクラッシュは受け付けなかった。彼等の政治的主張がまやかしに思えたんです。一方、セックス·ピストルズの場合はただふざけて楽しんでたからまし。クラッシュは見せかけの粗野な政治的主張で全く受け付けられなかったんです。それより、むしろラモーンズのようなもっとこうハプニングか何かみたいなバンドの方が好きですね。言い方変だけどわかってくれますよね?
だから、あのムーブメントというのに飲み込まれたものの、その後、すぐに実はこれは酷い皮肉であり、結局、古いものを新しいものに変えるはずが、実際にやっていることは前とまったく変わらなかったことに気付いたんですよ。あまりにも業界が関与し過ぎたわけ。あまりにニセっぽくて、あまりにコントロールされ過ぎ。過剰に商業主義に走ってしまったんです。
TB: それを聞いて、"皮肉屋とは失望した空想家”という古い諺を思い出しました。
AP:(笑)そう、それ!初めて聞いたけど全くその通り。
TB:歌詞を読むと、特に最後のヴァ―スの部分ですが、何らかの解決はないのでしょうか?それとも、意図的に結論は任せると?
(最後のヴァースの歌詞)
結局、何の教訓も学ばなかったんだね
せっかく正そうとした年月
約束というフラッシュは
ストロボより先に消えた
AP:そう、わざと結論は出していない。あれは深い失望の歌です。圧迫感があるんです。サウンド自体圧迫感を表現したかったんです。出ていますよね。今までレコーディングした中でも最も暗い曲だと思います(笑)。"Tomorrow Never Knows"のネガティブ版みたいな感じ。でも、明日は知っているわけ。もっといんちきな事に遭遇するって事を!警戒しなくてはならないわけ。レコーディングした中では一番暗い曲であることは確かですよ。そればかりか、坊さんのループまで入れてある(低音の喉音)。
(PART2へ続く)
XTC - Travels In Nihilon
(対訳:MIKO)
結局、何の教訓も学ばなかったんだね
時間を無駄にしただけ
若者文化?そんなものないぜ
仮面を貸してくれるだけ
ニヒロンでの旅
キリストの姿は見かけなかった
ファッション、それはバンパイア
おまえの背中に乗っかかる
流行廃れになり
棚で再流行になるまで待つ
奇抜なイメージを創ることが
必要なんだって暗示に掛けられる
一回り踊れば元の位置に戻る
欲望より一歩先
結局、何の教訓も学ばなかったんだね
せっかく正そうとした年月
約束というフラッシュは
ストロボより先に消えた
ニヒロンでの旅
キリストの姿は見かけなかった