XTC Best Band Ever

XTC is the best band ever. Period.

亡き殊能氏の『ハサミ男』の元ネタXTCの『シザーマン』をアンディ・パートリッジが詳しく解説 「当時、モラルある生き方を目指していた」「ライブの度にデイブは意地悪くニヤリと笑い俺に追いつけるもんならやってみろと曲のスピードをめちゃめちゃ速めた」

アンディ・パートリッジ

インタビュー

  

Andy discusses "Scissor Man"

アンディ "シザー·マン"を語る

 

"シザー·マン"は、1979年のドラムズアンドワイヤーズからの曲

 

インタビュアー: "シザーマンについて。歌詞から始めます - ちょっとダークですね。

 

アンディ:大人のためのモラルストーリーにしたかったんです。

 

インタビュアー:そう思ったきっかけは?

 

アンディ:「もじゃもじゃ頭のペーター」(ドイツの絵本)! 物語知ってます?髪と爪を伸ばし放題伸ばし、しょっちゅういたずらばかりしている子供がいて、ある日、誰かがでっかいはさみを持ってきてその子供の指ごと切り落としそこらじゅう血が飛び散りましたとさ - 終わり!

 

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インタビュアー:それは、良く昔、世の親達が子供が品行方正であるようにと聞かせていた物語ですよね?

 

アンディ:そう!コワーい話。だって、爪を切る話ではないですよ - 指を切られる話ですよ!

 

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インタビュアー: "そうして、子供は爪が伸びることを二度と心配しなくても良くなりましたとさ。"

 

アンディ:(笑)それを大人の物語にするアイデアが気にいって。悪事をする大人に対して誰かが来て罰を与えるわけ。それを歌詞で示唆しているだけ。それがこの曲を作るインスピレーションでした。あと、何度もパロディ化されているこのダークでゴシックな「もじゃもじゃ頭のペーター」の物語が大好きだからです。確か、戦時中、「もじゃもじゃ頭のヒットラー」バージョンもあったと思う。オンラインで見つけられるはず 。僕は見た事あります。その話ではもじゃもじゃ頭をしたアドルフヒットラーが彼の悪事に対して罰を受けるんです。

 

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「当時、高い倫理観で世の全てを善か悪か正しいか間違っているかで判断しようとした」「毎晩ライブの度にデイブは意地悪くニヤリと笑い"俺に追いつけるもんならやってみろ"と曲のスピードをめちゃめちゃ速めていった」

 

インタビュアー:アンディの人生そのものに何かが起こっていたのでしょうか?

 

アンディ:確かその頃、僕はモラルを持って生きようと努力していたんです。なんだかちょっとモラル自警団みたいな感じだったんですね。同じ時期に 僕のソロアルバムTake Awayに入れる "New Broom"(注1)のアイデアを思いついているんです。あの頃、スティーブ・ディットコーの "ミスターA" のコミックを良く読んでいたんです。極めて善悪をはっきりさせたがる、最近ではグラフィック小説と呼ばれるコミック。善悪の曖昧な部分がないのが気に入っていて。黒か白か。善人か悪人か。もちろん、それっておかしな考え方ですよ。だって、実際は誰だってグレーや、茶色や、カーキの濃淡様々な曖昧な色合いなんだから。でも、あの頃の自分は、善悪をはっきりさせ、何が正しくて何が間違っているのかという観点から、世の中についてよりはっきり考えることが出来たんだと思います。物事にピントを合わせてはっきりと理解するってこと。ピンぼけした善悪や、曖昧なものを許容することが出来なかったんです。

 

(注1. New Broomは1980年に出たアンディのソロアルバム Mr. Partridge: Take Away / The Lure of Salvageからの曲でSteve Ditkoというマンガ家のマンガに出てくるモラルヒーローのMr.Aを歌っている。ちなみに音楽はMaking Plans For Nigelをスローにしたダブバージョン。この曲についてのアンディの説明:

”Mr. Ditkoは'Mr. A'という極めて道徳心の高いコミックブックを生み出したアメリカのマンガ家。彼によるとこの世には善か悪しかなく、その中間はないそう。Mr. Aは彼のコミックブックに出てくる誰にも堕落させることの出来ない中心人物だった。”)

 

インタビュアー:その頃、誰かに裏切られたと感じていたんですか?復讐の歌なんでしょうか?

 

アンディ:それほど深い意味があったかどうかはわかりません。単なる当時の精神状態だったと思います。良いか悪いか、昼か夜か、正しいのか間違っているのか、という判断に基づいて物事を捉える必要があったんです。どっちつかずの曖昧な態度で物事を考える事が出来なかったんですよ。

 

(中略)

 

今、Ditkoのグラフィック小説を読むと、少々全体主義臭い。つまり、俺のやり方が気に食わないならさっさと帰れよって感じ。でも確かに当時はそれが気に入っていたんですよね。この世には曖昧な部分などない、善か悪かどちらかでしかないという考え方が。

 

インタビュアー:(笑)このアルバムではどの時期に書かれた曲なんでしょうか?初期のものですか?

 

アンディ:あのねえ、それが思い出せない。後の方に書いたものだと思いますが。アルバムに入れた後、ライブで演奏し始めたんですよ。それでこの曲はどんどん巨大なものへと変貌していったんです。

 

まず最初に、曲のスピードがめちゃめちゃ速まっていった。デイブは面白がってやっていたに違いない。あいつ、わざと毎晩ライブする度にスピードを上げていくんです。僕たちに"追いつけるもんならやってみろ"という挑発ですよ。まず、あいつのギターパターンで始まるんだけど、あの顔に邪悪な笑みが浮かぶわけ。"この速さに追いつけるかよ、貴様ら!いいか、始めるぞ、俺に追いついてみろ!(笑)"って。

 

この曲は本当にライブ中にかなり肥大していったんですよ。特にエンディングのところ。レコードのこの部分は当然スタジ​​オで即興で作られたんですけど。つまり、"よし、ええと、ちょっとダブっぽいアウトロにしようぜ" と言ってやった。

 

今日、この曲を聴いてみて、なんていい加減で中途半端な終わり方なんだって思いましたがね。ライブでは結構物凄いモンスターエンディングへと変貌した。だって、5分から10分くらい延々とこのアウトロをやったんですからね(笑)!

 

インタビュアー:ええ、今日のこの曲の3つの異なるバージョンを聴きました。まずもちろんスタジオ·バージョン、Rag And Bone Buffetに収録されているBBCライブバージョン、これはすごいスピードが速いバージョンで...

 

アンディ:そのバージョンは、思うに、アルバムバージョンよりも優れています。

 

インタビュアー:どうしてそう思うかわかります。あのバージョンはもっと曲として完成度が高い。ずっと演奏を重ねてきたようなサウンドです。

 

アンディ:この曲について考える時間や、ライブで演奏する時間があったから。

 

インタビュアー:それと、BBC Radio 1 ライブインコンサートのバージョンもあるんですが、これが更にもっと速くて長い。それから、"Love On A Farmboy's Wages"のB面にあるライブカットも...

 

アンディ:そして、そのうちの一つは、 "カットイットアウト(いい加減に止めろ!)"と呼ばれている!

 

インタビュアー:そうです!メンバーが "シザー·マン"のプログレッション部分でジャムをやっているバージョンです。

 

アンディ: "シザー·マン"に設けられた"石炭貯蔵庫"、つまりダブセクションがライブではとてつもなく大きくなって長くなって重要な部分となったため、この歌自身が脇に追いやられてしまったんですね。例えると、歌の部分は正面玄関(狭い玄関ホール)にあるちっこい廊下になり下がり、そこのドアを開くといきなりアルバート·ホール(由緒ある広い劇場)のダブセクションが聴こえてくるわけ!

 

要するに、最初の部分の演奏は1分であっと言う間に終えた後、後の9分をエンディングに延々と費やすわけ。 "シザーマン"のダブっぽい部分を演奏することがライブを楽しみにしていたほんのいくつかの理由の一つでしたね。だって、毎晩、違うことをしたので。