XTC Best Band Ever

XTC is the best band ever. Period.

XTCの歌詞の誤訳の指摘と解説その1;Books Are Burning

XTCの歌詞の誤訳の指摘と解説その1

 

Books Are Burning:

 

これは、私のもっとも愛するXTCの歌で、歌詞にも大いに入れ込んでいる。これこそアンディの権力なんかに屈するもんかという魂の叫びである。何度読んでも感動し勇気を与えてくれる素晴らしい歌詞だ。

 

日本盤Nonsuchの対訳が間違っているようなので指摘をしたい。

 

誤訳例: "the church of matches"のマッチズを"マッチ棒"ではなく、単語の訳語候補のひとつであるご縁を結ぶ"マッチ"と勘違いして"縁結び"と誤訳。the church of matchesを「縁結びの教会」と大誤訳。単純に考えて、この歌詞で出てくるmatchesはマッチ棒の事だと思うはずだが!つまり、この歌のテーマである焚書の火はマッチを使う→焚書は宗教と深い関わり→「マッチ棒で出来た教会」が「無知」故に聖油のつもりでガソリンで清めているというアンディの強烈な皮肉を込めた批判なのだが。

 

"watch us turn 'round and cast our glances elsewhere" これは“権力を恐れて、焚書の様子に背を向け見て見ぬふりする自分たちを見てごらん”と言う意味だ。"watch us"は“僕らを見てごらん”。"turn 'round"は“背を向ける”。"cast our glances elsewhere"は“僕らは視線を他の方へ反らしている”という意味だ。

 

下記にこの歌の歌詞の解説を加えて説明をします:(原文の歌詞は著作権の問題で全部記載できません。)

 

Books are burning

本が燃えている

(アンディはあえて“誰”が燃やしているのか告げず聴く者に不気味さと疑問を抱かせる)

In the main square, and I saw there

メイン広場で そして見た

(この“main"がポイントで、権力者が市民を脅かすためにわざと多くの者の目に晒せる場所で焚書をしている様子)

The fire eating the text

炎が文字を食い尽くしている様を

(アンディは“文字”という文明人として知識や知恵を分かち合う神聖なものが炎という原始的な破壊の力で食いちぎられているという野蛮さを表現している)

Books are burning

本が燃えている

In the still air

シーンとした空気の中

(まざに風も吹かず、誰も何も言わず、シーンとしている中、メラメラと本だけが燃えている様子がゾクッと来る。みんなショックでただ茫然と立ち尽くしている様子が目に浮かぶ)

And you know where they burn books

知ってるだろ 本を焼く者は

(ここでアンディはハイネの言葉を引用し、さりげなく、焚書は今に始まったことではなく、ハイネの時代からあったのだ、歴史は繰り返すのだと私たちに教えてくれている。ここの"where"は場所というよりも"if"あるいは"when"の意味。)

People are next

ついには人間を焼くようになる

 

活字で何が書かれようが

許されるべきだ

(本を愛するアンディは言論の自由を信じている。)

この世を去った者から生きる者へ譲られた知恵のホットラインだから

それは 心と頭を豊かにする貯蔵庫への鍵なのだ

 

Books are burning

本が燃えている

In our own town,

この街で 

焚書のような権力の暴力行為は遠い場所の話ではなく身近にもありえるのだ。)

watch us turn 'round

みんなが背を向け

(これは権力を恐れる一般市民の姿を描写してる。)

And cast our glances elsewhere

知らん顔をしてる様を見てごらん

(気が付いているが、見て見ないフリをし保身に走る小心者の市民たちの姿。)

Books are burning

本が燃えている

In the playground

子供たちの遊び場で

(これも権力が子を持つ親たちを脅す行為だ。)

Smell of burnt book is not unlike human hair

本を焼く匂いは人の髪が焼ける匂いに似てなくもない

(子供たちの遊び場で本が焼かれて、そのキナ臭い匂いが人間の髪を燃やす匂いを思わせるのが恐怖を駆り立てる。“似てなくもない”という二重否定の表現もよけいに不安感を高めるニクイ表現だ。)

 

良本か悪本かなどを超越し

活字は単なる神聖なものにとどまらず

みじめな臆病者の暴力を悠然と見下ろし

自由で解放された空へと魂を飛翔させる人間の権利なんだ

The human right to let your soul fly free and naked

Above the violence of the fearful and sad

("fearful and sad"は"fearful and sad people"の略だが、fearful and sadという形容詞の次に本来続く"people"をわざと略している。恐がりで情けない権力者の事を指している。権力者が最も恐れるのは勇気と非暴力で立ち向かってくる民衆。権力者はそれを暴力で阻止しようとする。アンディはそれを描写している。"Above the violence of the fearful and sad"つまり“活字とは恐がりで情けない奴ら(権力者)の暴力をも超える人間の権利なんだ!”とアンディが私たちに訴えている!)

 

The church of matches

マッチ棒で建てた教会

(ここでアンディの怒りが辛辣な批判となって火を吐く。焚書を行う教会=マッチ棒を使う教会という意味。権力はしばし宗教と癒着し、人間を支配してきた。教会と言うと普通は権威を誇る立派な建物を構えているが、焚書をするような教会は、アンディには、中身のないちっぽけな今にも壊れそうな教会に見える。)

Anoints in ignorance with gasoline

無知故にガソリンの聖油で清めている

(宗教者はドグマ主義に陥ると無知な行為に走り人間主義とは逆の方向へと突き進んでいく。マッチ棒で作られた教会にガソリンを掛けるという恐ろしくも馬鹿げた光景だ。)

The church of matches

マッチ棒で建てた教会

Grows fat by breathing in the smoke of dreams

焼け散った夢の煙を吸い込み膨れ上がる

焚書により思想や夢を壊すことは人類に対する冒涜だ。)

It's quite obscene

まったく ゾッとする光景さ

(“obscene”は非常に卑猥な、わいせつなという意味も含んだ、身の毛もよだつような気持ち悪い野蛮な行為の事。)

 

本が焼かれている

日ごとに増える一方さ

僕は祈る

おまえらがこの愚かなゲームに飽きることを

本が焼かれている

願わくば

これにより

不死鳥が蘇ってくれたらいい

(“不死鳥”とは焼かれて消え散った“文字”、つまり人々の思想、夢の事。)

その炎の中から…

 

*"where they burn books, People are next" : 何千冊という書籍がナチスの手により焼却されたことに関してハイネいわく “That was mere foreplay. Where they have burned books, they will end in burning human beings.” 「焚書は序曲にすぎない。本を焼く者は、ついには人間を焼くようになる」~戯曲『アルマンゾル』から引用。