XTC Best Band Ever

XTC is the best band ever. Period.

アンディがMayor of Simpletonを語る:“このXTCファンに人気のあるベースラインは実は僕が科学的に精密設計した。バッハ的な完璧な対位法関係を持つラインにしたかった。歌詞は知的であることよりも愛情深い方が優れているというシンプルなメッセージ”

2007年1月07日

  

Andyが語る: Mayor of Simpleton

 

“このXTCファンに人気のあるベースラインは実は僕が科学的に精密設計した。バッハ的な完璧な対位法関係を持つラインにしたかった。歌詞は知的であることよりも愛情深い方が優れているというシンプルなメッセージ”

 

TB(インタビュアー): このベースラインについてですが。

 

AP(アンディパートリッジ): そう! このベースラインについては謙虚さなど捨てて話します。というのは大いに自慢をすることに励もうというのが今年の決意なんです....

 

TB: まあ、あのベースラインはアンディのアイデアなのですから、当然でしょう! アンディのアイデアであることは明らかです -- デモに入ってますから。

 

AP: [クスクス笑い] 良くファン達が投票で “Colinのベースラインのベストを投票しよう”とか何とかやるけど、彼らが気が付いてないのは、投票結果に入るベストベースラインの二つ -- "Vanishing Girl"と"Mayor of Simpleton" -- 実は、Vanishing Girlのベースを弾いてるのはこの僕…

 

TB: それは知らなかったです。

 

AP: 本当。 あと、"What in the World?"のベースを弾いてるのも僕ですよ。 --

 

TB: まさか!

 

AP: ベースが僕 -- リズムギターがColin。

 

TB: それでは、あの二曲もベースラインはアンディのアイデア

 

AP: その通り。

 

TB: 面白いですね -- 今までずっとあれはColinがマッカートニーを真似しているとばかり思っていました。

 

AP: いや、デュ-クスでは僕らは生録音しないといけなかったんです。(デュ-クスオブストラトスファーのアルバムはあくまで60年代の再現をするのが目的だったので、レコーディング機器等も一切最新の技術を用いることはしなかった。)だから、Colinはどう考えてもベースとリズムギターを同時にプレイ出来なかったわけ。Colinの曲だから、彼の作ったリズムギターのコードがどうなのかがわからなくて、コードを教えてもらうのではなく、僕が言ったのは "あのさ、おまえがコードをプレイして、俺がベースをやる。そうすれば、昼食前にこのレコーディングが終わるだろ!”

 

でも、ファン達が投票するColinのベストベースラインが"Mayor of Simpleton"なんですよ。Colinはあのベースラインを弾くのに大変な思いをしてましたね。 凄くキッチリしてるから。 あのベースラインを作るのにかなり時間が掛かった。J.S.バッハ的な発想で、コードの位置と、メロディの位置に対して一音一音が完璧な対位法関係を持つようなベースラインにしたかったんです。 ベースはパズルの3分の1ってこと。

 

TB: Andyはそれを良く自分の曲でやっていますよね。

 

AP: そう、衝動脅迫ですよ。 多くの僕の曲では、Colinには具体的にどのコードを弾くのかは言わないんですが、この曲だけに関しては言ったんです。“このベースラインを弾いてくれないと困る。これを作るのに何週間も掛かったんだから”。ベースの音を一音づつ作っていったんですよ。ボーカルの音の位置に、3和音のどれかの音を省略してある各ギターコードの位置に、その省略形コードを鳴らすギターの実際の一音一音の位置に、それぞれベースの音を重ねていったんです。このベースラインは科学的に作られたんです。全ての音が完璧に正確な位置に配置されるよう精密設計されたわけ [笑]。 Colinは気に入ったはずですよ。だって、二人してこれは大学の鐘の響きみたいだって話してたくらいだから。

(注:対位法:複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ互いによく調和させて重ね合わせる技法。旋律をいかに同時的に堆積するか。1つのメロディに対し、新たな(複数の)メロディを同時に奏でる技法。対位法の技術を駆使した曲にはバッハが確立したFugaという形式が有る。)

 

TB: なぜ、そういう猛烈に忙しないベースラインを入れる必要があったんですか?

 

AP: この曲を、前へ前へと進ませるため。 すばしっこい足みたいな感じにしたかった。喜びの感じを持たせたかった。 ガキの頃、走るのが好きでね -- 実は、今でも走ってる夢を見たりしてるんです。 まあ、今走ったら、およそ30歩くらいのところで心臓発作で死ぬ [笑]、でも、本当にガキの頃、走るのが大好きで、走ってハイになってたんですよ。 このトラックでは、そういう足早に前に進んでいく感じが欲しかったので、ベースにかなりの推進力となってもらわないといけなかったわけ。 ギターはこんな感じで[ギターパターンを歌う] -- まるでシーケンスされたように聴こえるんですが、実はそうじゃない。 実際に演奏したんです。 ベースは連続的なアルペッジォに対抗して進んで行って欲しかったんです。 それで、当然ドラムもそれにガッチリ組み合わされているわけ、バスドラムが猛打されながら。

 

だから、そう、Colinには極めて大変な事だったが、遂にプレイが出来るようになってくれたんです。というのも、僕らがラジオライブツアーをやった際に、この曲をプレイした時、あいつはアコースティックギターでそのベースラインをプレイしてましたから。

 

TB: ここで少し歌詞について。 あのダメ男である事に対する自負心みたいのはどうやって思いついたんでしょう? それが、Andyにとってのテーマみたいになっているのは知っていますが、でも、通常、Andyの言うダメ男というのは誰かの為にお金を稼ぎたいのだがその金がない、というところから来ていますよね。

 

AP: おお、そうそう。自分の曲には金銭的な悩みの曲が沢山ある。 [ため息] 多分、この曲ではちょっとウソつき野郎になってます。だって、僕はこの歌で言うようなバカではないですから。 ここで言いたいのは、人間の感情、そして、正直な心の暖かさの方が、辛辣で冷たく殺菌されたような知力よりも優れているってことだと思います。 知的であることよりも、愛情深い方が優れている -- という、かなりシンプルなメッセージ。

 

恐らく、この歌詞はわずかに自叙伝みたいになってるかも知れないなあ。 最近、自分の学校時代の成績表を見つけたんですけど -- それを見たら、いかに十代の頃、学業への興味がどんどん薄れていったかがわかるわけですよ。 一番最初の成績表ではかなり色んな事で良くやってたんだけど、その後本当に興味を失ってしまったんですね。 あれを見てると、14、15ぐらいまでにはどうでも良いっていう態度がわかるんです -- とにかく、学校なんてどうでも構わない。

 

自分は社会に出ても何をしても成功しないだろうというのがもう大方予想されていたんです。 でも、成功というのは学業ではないって分かってたから。 それは自分の人生にとって重要なものではないって。 グラマースクール(日本の中学・高校に当たる)に行って3、4年だが何年だか勉強するのではなく、学校は15歳で退学しようと決めたんです。

 

TB: おっ、そんなに早くに学校を辞めたんですか?

 

AP: その通り。 学校を辞めるのを待ちきれなかった。 大嫌いだった。 馬鹿な奴らが死ぬほど嫌だった -- 馬鹿な教師、馬鹿な生徒達はもっと性質が悪かった。 しょっちゅういじめに遭ってたんですよ。僕は強くなかったし、やせっぽちで、アートタイプだったからさ。それにスポーツが嫌いだったでしょ。 だから、そう、この歌には若干自叙伝的な面があります。

 

TB: でも、アートスクールに入学したんですよね。

 

AP: そう、一時、グラフィックデザイナーになろうかなんて思っていた。 今は、アルバムスリーブのカバーとか、そういうのやってるけどね。でも、カレッジで一年半経ってまたすぐに「これだってただの学校だろ」と気が付きました。当然、その頃には、既に音楽をやることに興味がどんどん募っていたわけ。それで、自分は音楽で食っていけるみたいなクレージーな妄想をしていたんです。

 

TB: ものすごいビッグになるぞって。

 

AP: グロテスクなほどビッグにね! [笑]