2014年10月アンディのインタビュー「オリジナリティーとは自分が影響を受けた音楽をめった切りにすること。自分のヒーローを肉挽き機に押し込むこと」「新しいバンドへのアドバイス:今では誰も音楽なんかにお金を出さないから生活していけない。趣味としてやれ。キャリアとして音楽が出来た時代は終わった」
INTERVIEWISM アンディ·パートリッジのインタビュー:ドラムズアンドワイヤーズリリースから35年目を迎えて
オリジナリティーとは自分が影響を受けた音楽をめった切りにすること。自分のヒーローを肉挽き機に押し込む。出てくるものは独自のサウンドに聴こえるが実はヒーローの生の牛肉から作られたもの
新しいバンドへのアドバイスは今では誰も音楽なんかにお金を出さないから生活していけないだろうから、音楽は趣味としてやること。キャリアとして音楽が出来た時代はもう終わった
2014年10月
インタビュアー:D&Wリリースから35年。デラックス·エディションで再びこのアルバム曲を聴くのはどんな気持ちですか?
アンディ:聴く度に奇妙な気持ち。まるで他人が書いて、歌って、演奏しているかのように聴こえるんですよ。まあ、それは本当でしょうね。だって、今の考え方の僕だったら違う風にやるでしょうから。
もっと、リスクの少ないやり方で、それで酷いものになっているでしょうね。人生の内のある一時期の人間たちのスナップ写真なんですよ。うぶで、愚かで、お馬鹿なエネルギーがはち切れてる。
アルバムの中の曲でオリジナルミックスに埋もれていて、ずっと忘れてしまっていたのに、今回、再発見したことってありますか?
ないですね。後期のレコーディングに比べてかなりミニマルのアルバム。
懸念は、5.1の6チャンネルを全て満たすのに十分な音の要素がないのではないかということでした。主に2本のギター、ベース、ドラム、ボーカルをライブで録ったアルバムなので。少々オーバーダブを入れて。複雑さは何も無い。あの当時は、とにかくレコードをライブと同じサウンドにしたかったんです。
XTCのアルバムのニューミックスにスティーブン·ウィルソンを選んだのは何故ですか?プログレが好きなのでしょうか?
僕のレーベルAPEを管理してくれているデクラン·コルガンがスティーブンを紹介してくれたんですよ。デクランはキング·クリムゾンの方も面倒を見ているんですが、スティーブンもクリムゾンのニューミックスをやった関係で繋がっているんです。
だから、僕に勧めてくれたのは自然な流れだった。スティーブンがやったクリムゾンのサウンドを聴いて....僕らも是非やって欲しいなと思ったんです。それと、彼は聞き上手。プログはそれほど好きではないんですがね。
デイブはプロガー(プログファン)だけど。イエスの一部、好きなところはありますが。でも、プログレはあまり興味が湧かない音楽の形式なんですよ。
聞くところによると、D&WのBlu-ray版にはインストミックスやデモセッションも含むと合計約117トラックが入るらしいですね。
未完成バージョンの音源をファンと共有することについてはどう思います?
うーん、僕は「ファン」の立場で考えているんです。つまり、「自分だったら好きなバンドの何が欲しいか?」ってね。
そして、その答えは「…全部欲しい!」だから、その原則を守っている。自分自身、好きなバンドのスケッチの段階や、デモの段階の音源が溜まらなく聴きたい、だから僕たちのファンもそうなのではないかって。
僕は手品師のトリックをどうしても知らずにはいられない性質の人間なんですよ。あるいは、どうやって画家はああいう筆さばきをやったのか知りたくて仕方がない。自分にとっては、未完成の物はいわゆる「完成したもの」と同じくらい、あるいはもっとそれ以上に、魅了されるんです。
あのアルバムは、バンドの将来のサウンドを定義する上で非常に重要なカギを握る作品でした。完成した時どのくらい満足してましたか?望んでいた通りの作品となっていましたか?
レコードが完成すると同時にライブツアーに放り込まれるわけですから、そんな風にじっくり振り返って考える時間も無かった。スタジオでシンバルの揺れがまだ止まらないうちにツアー用バスがエンジンをふかして待っているわけ。
ずっと後になって、やっと初めて自分のやった事がいくらか分かってくるんです。それでも、あくまで、僕らは金魚鉢の中で泳いでいるようなもので、自分たちの作品に対して偏見無しでは見れないんですね。外にいて初めてこちらの中を見ることが出来るわけで。
D&Wは、多くのバンドに影響を与えたアルバムとして重要な作品でした。プリムスはMaking Plans For NigelとScissor Manをカバーしていまよね。ブラ―がDay In Day Out、Reel By Real、When You're Near Me…等の曲にインスピレーションを受けたことは否定できませんし。(だって、アンディはブラ―のModern Life Is Rubbish のアルバムのレコーディングの初期を手伝ったくらいですからね)このアルバムが与えたこれらの影響の大きさについては?
そういうものでしょ。つまり、XTC自身、誰かに影響されて....今度はXTCが次のバンドに影響を与える。誰かがプールに何かを落す度に波紋が広がる。影響を避けることは不可能なんですよ。当然、非常に自尊心をくすぐられます。
ただ、明らかに僕らに影響を受けているくせに、それを認めないバンドには不愉快になりますがね。世間のそういう拒絶反応が何なのか理解できませんね。僕らが誰かに影響を受けた事を認めるのをためらうようなことは全くなかったし。
だって、どうしてためらうわけ?オリジナリティー(独創性)とはそれだよ。自分が影響を受けた音楽をめった切りにするってことだよ。自分の音楽のヒーローを間違ったやり方で肉挽き機に押し込むことだよ。その機械から出てくるものは独自の個性的なサウンドに聴こえるが、実はそれは常に君に多大な影響を与えたヒーローの生の牛肉から作られたものなんですよ。
スティーブ·リリーホワイトとの仕事は本アルバムが初めてでした。XTCは彼がプロ―デュ―サーとして初期に手がけたバンドのひとつで、ピーター·ガブリエルとU2を手掛ける前でしたよね。どうでしたか?レコーディングセッションで覚えているのは?知っておくべき裏話は?
もっとでっかいドラム·サウンドが欲しくて彼に頼んだんです。どうやってそのようなサウンドにするか良くわかっていたからね。スティーブの大きな貢献はあのポジティブな気質です。あの「UP」精神(前向きな精神)。
彼はミュージシャンではないから、コードが正しいとか間違っているとかは分からない。一方、「good vibe(ポジティブなエネルギーを発する)」に長けている人。
だいたい、プロデューサーが欲しかったわけで、もう一人のミュージシャンはいらなかったし。彼の心の状態というのが一番の貢献でしたね。裏話は多過ぎます。このインタビューでは全部を話すには、時間がない、載せるページの余裕がない、
弁護士もいない。
アルバム中でお気に入りの曲は?理由は?
Roads Girdle The Globeでしょうね。あの、車の金属が衝突している感じが大好きなんですよ。まるで、メカニカルモーターって感じで、全部の部品(音楽のパート)がぴったり噛み合っているんですよ。
この曲は自動車に捧げる皮肉たっぷりな賛美歌なので、ちょうど良い。それと、Captain Beefheart and His Magic Bandにある意味感謝を捧げている曲でもあります。(彼等のサウンドを真似た。)
アルバムのサウンドはアンディにとってかなり重要なものであると思われます。Drums & Wiresというタイトルはこのアルバムの音に、主にあの暖かくて雄大なドラムサウンドに関係しているといつも思っていました。サウンドの面でお気に入りのアルバムはどれですか?
ヒッピーが良く使うフレーズですが、どのアルバムサウンドも、僕らがいたその時代や場所、僕らの考え方に良く合ったサウンドだと思います。もちろん、エンジニアの中で優れた人、劣っている人がいたが、その時その時のアルバムのサウンドを作るために使われたわけです。
例えば、絵画でも粗く混ぜた油絵具を使っているものもあれば、そうじゃないのもある。 アルバムを気に入る決めては曲の質ですね。他のバンドメンバーは違うかもしれない。
Drums And Wiresのサウンドは全体的にバンドが進むべき方向のサウンドに聴こえます。バンドが2本のギターを持ったことの喜びで騒ぐドラム主導のサウンドへと。
新しいレコーディング技術には違和感はありませんか?
宅録は良いが、エンジニアになろうと必死過ぎて、パフォーマンスに集中出来なくなりますね。昔のスタジオシステムは好きでした。
つまり、スタジオに行って演奏するだけ。やれ、マイクはどれにしようだの、レベル、漏れのレベル、コンプレッションレート等の心配は他人に任せきりで良かったんですよね。
家で録るのは良いんだけど、スタジオとは非常に違います。コンピュータレコーディングは自分が望むようにやってくれる。テイクを録って、それで終り。または、永遠にいじくりまわしたかったら、それも出来る。自分の好みでどうでも出来る。それでも、やはりサウンドはテープの方が勝っている。音をもっと引き立ててくれます。
デジタルリリースとアナログレコード、CD/Blu-rayに関してはどう思いますか?お好みの形式は何ですか?
アナログレコードほど良い匂いで優れた音の形式はまだ存在しません。現在、レコードプレーヤーを持っていませんが。
でも、みんなそれぞれ好みの形式があって、好きなのを聴けば良いんですよ。まあ、皆が重要視するのは音質ではないんですよね。昔からそう。録音サウンドの歴史を振り返れば、常に「使い易さ」が重要だったんですね。
業界で作るのにどれが最も安上がりか。一度として、どの形式の方が良い音か?ではなかったんです。 気に入っている形式というのはないです。その時の状況によります。音楽はほんの少ししか聴いていないもので。だって、汚染になるからですよ。必要か否かは関係なくただ空間を埋めるノイズ。
一日中音楽を聴くなんて出来ませんよ。ちょうどお店の香水売場で働くようなものです。自分の感覚が絶え間なく攻め立てられているわけ。悪夢ですよ。
デジタルストリーミングサービスは?SpotifyとDeezerの印税規定と倫理に反対しているのを知っています。
彼らが音楽とミュージシャンを衰退させている主因です。あいつらは悪。でも、モラルなんて誰も気にしてない。消費者も、レコードレーベルも、ストリーミングサービス側も。各々、望むものを手にしている。これらのサービスは、ミュージシャンたちを搾取していますよ。どこかのブルースシンガーが同意して署名をした、人を食い物にするような内容のレコード契約書よりもはるかに早い速度でね。低次元の邪悪さ。
最近、未払いの印税についてEMI出版社と争っていましたよね。どうなりました?新しいバンドに、音楽業界についてアドバイスはありますか?
最後にEMIと未払いの印税について喧嘩したのはユニバーサルに買収される前で、数年前のことだった。結果は結構良かったです。未払いの一部を得ましたので。 アドバイスは、こういう時代だから全部自分でやること。でも、今では誰も音楽なんかにお金を出していないから生活していけないだろうけどね。
だから、音楽は趣味としてやること。キャリアとしてではなく。それが出来た時代はもう消えた。
Black SeaのリミックスされたBlu-ray 5.1サラウンドサウンドデラックスバージョンももうすぐ出るのではと思っているんですが、その場合、どういうものを期待出来るんでしょう?
FIND(見つける)という言葉がキーワード。というのも、僕たちのこれらのアルバムリリースを決めるのはEMI/Universalが実際にマルチトラックテープを見つけられるかにかかっているためです。どのアルバムであろうが、テープが発見されたアルバムをミックスします。単純明快です。
彼らはかなり多くのレコーディング音源を紛失しているから、現在続いているXTCのアルバムリミックスシリーズは時系列とは関係なく、彼らが次に見つけるアルバムがリミックスされるわけです。
さて、このアルバムリリースから35年経ちました。もし、当時に戻れたら、また同じことをするでしょうか?
いいえ、やりませんね。画家になっているでしょうね。
この質問は使い古されていますが、どうしても聞きたいんです。ビートルズ派か?ストーンズ派か?
両方。でも…もしかしたら…もしかしたら、むしろ、キンクス派かも......もしかしたら。